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Q&A

猫エイズのキャリアになってしまいました

 今月の2日に行ったウイルスチェックで、家の子が猫(キキ、去勢済み、♂、4歳2ヶ月)がエイズウイルスにかかってる事が分かりました。。。まだ発病はしていないけど、とても心配です。先生は「発病しないまま寿命で亡くなる子も多いから」と言ってくれ、知り合いの知り合いにも去年発病しないまま19歳で亡くなった猫を飼っていた方がいて、それを聞いて少し安心したのですが、ネットで猫が発病しちゃった人やエイズで猫が死んじゃった人の話を読み、例えそんな日記が100件あっても、全国規模で考えると少ない方なんだろうけど、一つでも発病した猫の話を読むと、「いつか家の子も。。。」という気持ちになって、とても怖いんです。

 先生に聞いても、ネットで調べても「ストレスを与えない」「良い食事をあげる」「日ごろから健康状態を気にする」しか分からず、もっとしてあげれる事はないか知りたいんです。ネットで「猫が生きてる間に発病するのは稀だ」と書いてるサイトがあったんですが、このサイトは猫エイズ等の病気を持った猫の里親を探してる団体の方達のサイトなので、「多少良く書いてるんじゃないかなぁ?」とネガティブにしか考えれないんです。。。

 唯一、ネットや人に聞いて分かった事は、多分生活環境が大分影響してるんじゃないかという事でした。理由は、知り合いの知り合いが飼ってる猫は「去年19歳で死んだ猫は発病しないどころか病気にもならなかったし、今もエイズキャリア猫を2匹飼ってて、2匹とも8歳になるけど口内炎にすらなっていなく元気」なのに対し、ネットで発病しちゃった猫を飼ってる方は「4匹エイズ猫を飼ってるが、1匹は発病してて、他の3匹も発病はしてないけど、口内炎など何かしら病気をもってる」らしいんです。前者の方が飼ってる猫は皆元気。。。後者の方が飼ってる猫は皆病気。。。これって、偶然なのかもしれないけど、私は多分、猫が生活してる環境が大きく関わってるんじゃないかと思ったんです。これから私は知り合いの知り合いの方に話を聞こうと思ってるんですが、色々な方の話を聞きたいので、「発病せず寿命を迎えた猫を飼ってた方(話を聞いた事のある方)」「飼ってる猫が発病しちゃった方(話を聞いた事のある方)」、他にも猫エイズに詳しい方や、詳しくなくても「私はこう思ってる」と個人の意見を聞かせて頂けないでしょうか?お願いします。

<猫免疫不全ウイルス(FIV)とは>
 猫免疫不全ウイルスは、体を外部からの病原体から守ったり、体内での腫瘍細胞の発生を抑えたりする免疫を司る細胞に感染するウイルスです。しかし、FIVに感染した場合、一気に免疫不全状態になるわけでなく、その病状は緩やかに進行します。FIVに感染後1ヶ月から2ヶ月ほど経つと、発熱したり、下痢をしたり、全身のリンパ節が腫れたりという急性の症状が現れます。これらの症状は数日から数週間、時に数ヶ月ほど続き、この時期を「急性期」といいます。

 しばらくすると、FIVは感染した猫の体内の深くに身を潜め、猫はまったく症状を現さなくなります。この時期を「無症状潜伏期(無症状キャリア期)」といい、この時期は何年も続くことがあります。個体によって「無症状潜伏期」の持続する期間は様々で、3~10年前後と言われていますが、多くは7年前後の潜伏期を持つようです。

※ 3歳で感染した場合、早ければ6歳前後、遅ければ13歳前後まで無症状でいる期間が続く可能性があるということです。

 この無症状キャリア時期を経た後、何らかの刺激によって感染猫の体内でFIVが活発に動き始めます。そして、猫の体内では免疫に関係する細胞(主にリンパ球)がFIVによって次々と攻撃され、その機能を失っていきます。
 これにより、猫の免疫力は次第に低下し、口内炎や咳、鼻水といった呼吸器症状や皮膚炎、下痢といった症状が繰り返し見られるようになり、これらの症状は治ったり再発したりを繰り返しながら次第に悪化して行きます。
 このような症状はエイズ関連症候群と呼ばれ、このような症状がでてくる時期を「エイズ期」と呼びます。
 ここに至ると、普段は無害な細菌やカビなどに対する抵抗力もなくなり、また種々の悪性腫瘍などにもかかりやすくなってしまいます。この段階になると余命は残り少ないものとなります。



<FIVキャリア猫と暮らして行く注意点>
 FIVキャリアの猫は、例え『無症状キャリア期』の猫で、まったく見た目が健康であっても、体の中でウイルスが増殖し、猫の免疫系を徐々に蝕んでいる事になります。
免疫機能が低下していけば、様々な病原菌にかかりやすくなるだけでなく、健康な猫であれば平気であるはずの微生物にすら感染(日和見感染)を起こしてしまう事があります。
 このため、注意していく事は、猫が快適と思える生活環境を用意し、できるだけストレスを与えないようにしてあげることです。
 快適な生活環境とは、猫がくつろいでいて、常に身奇麗な状態になれる環境です。また、FIVに感染した猫は、感染のどの段階であれ室内飼育にすることが重要です。
これは、先に述べましたように、例え無症状であっても免疫機能が低下しており、できるだけ病原体との接触を避ける必要があるためです。健康な猫であれば、かるい風邪や下痢ですむものであっても、FIV感染猫にとっては後々に悪影響を与えてくるものにもなりかねません。
また、この事から考えていくと、新しい同居猫を迎える際には、その同居猫が健康であり、猫白血病日ウイルスや他の感染症に感染していない事を確認してから迎えるようにしましょう。

 ストレスに関しては、考え出すと限がないことがありますから、『あれも、これもストレスだわ!』と考えていくのではなく、『どうしたらこの子はリラックスしている状態なのかしら?』というように引き算ではなく足し算で考えていくといいかもしれません。
個々の猫によってストレスの少ない生活というのは変わってくるかもしれませんが、日々の中で目を細めてゴロゴロと喉を鳴らしている時間があり、幸せそうにくつろいでいる時間があり、飼い主の方とスキンシップを楽しむ事が多ければ多いほど良いとお考えになってみてください。
 体力をつけさせるために、栄養価の高い良質なフードを食べさせるようにしていく事も大切です。ただし、肥満には絶対にさせないようカロリーコントロールはしていきましょう。肥満は更に免疫機能を低下させる原因となってしまいます。
愛猫とのスキンシップを兼ねて、マッサージなどを行ってあげるのも勧められます。また、ハーブを使用した免疫力を高める効果のある製品(アロマテープ)があるため、これらを使用してみるのも良いでしょう。

 もし、エイズ関連症候群となっているのであれば、主治医の指示に従い、愛猫の落ちてしまった免疫力を助けるため、しっかりと治療をしていってあげましょう。そして、一緒に暮らす時間を大切にしていかれることをお勧めいたします。