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Q&A

犬の椎間板ヘルニアについて教えてください

はじめまして。ミニチュアダックスを飼っているのですが、最近椎間板ヘルニアになってしまい、注射&点滴に通っている間は、なんとか歩いていたのですが、注射が終わってからは足を引きづっています。一度ヘルニアになると完全には直らないんでしょうか?
どなたか教えてください。

<椎間板ヘルニアについて>
 哺乳類の体には脊椎(背骨)と呼ばれる骨が、頭蓋骨から尾の部分まで一連のつながりとなって存在しています。この脊椎の中には脳につながる『脊髄』と呼ばれる中枢神経が走っていて、皮膚や体の色々な部分で感じた様々な情報を脳に伝え、また脳からの指令を筋肉に伝えて動かす役割を持っています。また、急な熱さや痛みを感じたときに、とっさに手を放すといったような反射反応や、内臓の反射反応などは脊髄で調節されています。

 脊椎(背骨)は頭蓋骨と同様、大切な中枢神経系を保護する役割を担っているのですが、脊椎は1つではなく複数個あり、これらは幾つもの靭帯でつながり、かつそれぞれの脊椎の椎体間には『椎間板』という組織が存在し、衝撃を吸収するクッションの役割をしています。
 この椎間板は脊髄神経の腹側にあります。これが老化や外傷、先天的な要因などによって損傷した時、椎間板の一部が脊髄神経やそこから末梢に伸びていく部分(神経根)を圧迫してしまうことがあり、その圧迫部位や程度によって痛みや様々な程度の麻痺が起こります。これが、椎間板ヘルニアと呼ばれるものになります。
ヘルニアによる圧迫が重度である場合は、脊髄神経が壊死し、生涯自力で体の一部を動かす事ができなくなったり、排泄が自分でできなくなったりすることがあります。

 椎間板ヘルニアは、症状が軽度であれば安静にしつつ内科的治療を行なって痛みや炎症を抑えていく事ができます。しかし、これは症状を緩和させるものであって完治させるものではありません。また、椎間板ヘルニアは内科療法によって一旦治った様に見えても、同じ部位や別の部位に再発する可能性があります。
 症状の悪化や、再発があった場合には、至急動物病院で診察をお受けになる事をお勧め致します。

 症状が悪化しないように、日常生活上では脊椎に負担がかからないよう、駆け回らずゆっくりと歩かせ、階段・ソファなどの昇り降りをさせないようにしましょう。もし、肥満気味であれば適性体重まで減量していくと良いでしょう。
 また、愛犬が動き回る所がフローリングであれば、足が滑らないよう犬が負担のかかる姿勢をとってしまったり、滑って腰を打ったりしてしまうこともありますので、カーペットなどを敷いて滑らないようにしてあげましょう。