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Q&A

犬の想像妊娠

初めまして。ウチのワンコなんですが、色々と調べてみるとどうやら想像妊娠の始まりのような気がします。初めての生理後、約2ヶ月が経って、最近いつもより元気がなく、食欲がおちました。それから自分のベットからあまりでてこないんです。クンクーン鳴いてばかりで、私の手までいままで以上にペロペロとしきりにずっと舐めていたり、ぬいぐるみをベットに持って行きます。まだお腹などは出ていないようですが、ちょっと心配で。。
皆さんの中でこのような経験のある方で病院に連れて行かれた方はいらっしゃいますか?宜しければ、色々と教えてくださればと思います。

 「想像妊娠」という言葉からは、雌犬自身が子供(子犬)を欲しがったり、妊娠を望むことからおこるもの、と思われる方もおられますが、実際はそうではありませんので、「想像妊娠」という言葉は、適切ではありません。正しくは「偽妊娠(ぎにんしん)」と呼ぶべきです。
(※ただ、「偽」という言葉が受け入れられにくいのか、「偽妊娠」という言葉を使って説明しても、ほとんどの飼い主さんが「想像妊娠のことですよね」という返答が帰ってくるぐらい、あまりにも「想像妊娠」という呼び方が一般化してしまっておりますが。)

「ちょっと心配で」とのことですが、この「偽妊娠」とよばれるものは「病気」ではなく、健康な雌犬にとっては生理的なもので程度の差はあれ起こり得るものですのであまり過剰な心配はなさらないでください。

あなたのワンちゃんの発情が訪れる周期(性周期)はご存知ですか?
一般的に4ヵ月から8ヵ月くらいの間隔で訪れ、発情や出血がみられる「発情期」といわれる期間は3~4週間程度です。人の生理と同じようなものですね。その後、発情休止期とよばれる時期が訪れ、人とは違って、妊娠してもしなくても生理がなくなるのです。人の場合は、妊娠しなければ、次の生理が来ますよね。この休止期をもたらす休止期黄体を、妊娠した時の妊娠黄体と受け取ってしまう場合があり、そんな場合は、乳房が大きくなり、お乳が出るようになるといった、妊娠した時とまったく同じ体の変化が見られます。

また、雌犬を複数頭飼育されている場合、はじめは発情がバラバラに起きていたのに、徐々に同じ時期になってくる傾向が見られます。これは、同居の雌犬の発情臭を嗅いでしまうことによるもので、性周期の同期化とよんでいます。しかし、前回の発情より3ヵ月以内に同期化による発情がおきても、卵子の成長が十分でないため、妊娠ができない「1回だけ不妊」の状態となりますが、体はこの時も妊娠の準備を始めてしまいます。妊娠していない雌犬がお乳もでるようになることから「乳母」の役目を担うこともあります。
 
発情の度に毎回、妊娠していなくても妊娠した時と同様の変化が起きるようであれば、雌犬の病気(子宮蓄膿症や乳腺腫瘍など)の予防のためにも、この機会に不妊手術についてかかりつけの動物病院で相談してみてください。