この猫ちゃん、一体何をされているところなんでしょうか…!ピンクの平たい棒は一体?そしてなぜうれしそうなの…?
ふむふむ、キーワードは“やすり”だとか。でもやすりって、工作の授業で使ったのこぎりやキリの仲間の道具だったような。
今回は、気持ちよさげな猫ちゃんの表情がどこから来たのかを調査すべく、ペピイスタッフのわたくしワタベが広島県・呉市まで行ってまいりました!
じゃん!こちら何かご存じですか?木や金属を削ったり、のこぎりなどの目立てをする道具「やすり」です。あまり一般家庭でお目にかかることはありませんが、大工さんや金工職人さんなど、プロの現場で活躍している大事な道具です。
でも…このやすりと猫ちゃん、何が関係あるの…??まさか。
そう、猫をやすったりする道具なんてないですしね!
って、ほんとですかー!
このスティックの名前は『ねこじゃすり』といって、老舗のやすりメーカー『ワタオカ』さんが生み出した猫ちゃんに使うれっきとした“やすり”なんです。
だけど、どうしてこんなに猫ちゃんが気持ちよさそうなのか、不思議ですね…。もう少し『ねこじゃすり』を解明していきましょう。
『ねこじゃすり』の秘密はこの面。まるでやすりの表面のようにボコボコしています。このザラザラした面、何かに似ていると思ったら、猫の舌!どおりで猫ちゃんが気持ちよさそうなわけですね。 これで撫でてもらうと、猫ちゃんが舌で毛づくろいをしている感覚に近いのかしら…。この世に一つしかない、この猫の舌みたいな『ねこじゃすり』の開発者、ワタオカさんにお話を伺ってみました。
「最初は、キッチンで使うための野菜を削れる樹脂製のやすりを作る予定で進めていたんですが、色々な理由があって断念したんですね。その試作のやすりを家に持って帰って、ふと目の前にいたうちの猫(ジャイくん・アメリカンショートヘア)を撫でてみたら気に入ったみたいで」
えっ、お家の猫ちゃんに使ってみたんですか?
「そうですね。本当にちょうど、目の前にいたもので(笑)何をしても怒らない子だったんです、おとなしくて。でもまさか喜んでくれるとは思わなくって。嫌がらないですし、毛もきれいになったのでペット用のブラシとして使えるのはないかと考え始めたのが開発のきっかけでした」。
と、ニャンとなきっかけから開発がスタート。すごい偶然というか、ジャイくんとの厚い信頼関係が生んだサプライズというか…。その後は猫の舌を再現できるように、ひたすら作っては試し作っては試しといった日々が約2年間は続いたそうです。
一番ワタオカさんがこだわられたのは『ねこじゃすり』のこの面。
やすり面の凸凹の深さ、幅、列などのベストな組み合わせを見つけるため、調整にとても苦心されたそうです。
「私たちはよく削れるやすりを作るために、これまで職人たちと一緒にものづくりを進めてきました。ですが、これは“削れないやすり”でしょう?『ねこじゃすり』では、これまでの伝統とは真逆の研究を進めていく、私達にとって初めての体験でした」
まさしく、逆転の発想!確かに削れないやすりって未知の世界ですね。そのほかワタオカさんは、“削らないやすり”として、高級爪やすりや、かかと削りも開発されています。ちなみに『ねこじゃすり』とは、「猫じゃらし」+「やすり」から生まれたネーミングだそう。わかりやすし!
「猫ちゃんが喜んでくれるやすりの面を求めて、試作を繰り返しては、うちの猫に試す。そんな日々がずいぶん続きました。」と、ワタオカさんと猫ちゃんの合作のようです!
このねこじゃすりを私たち人に例えると、孫の手が一番近そうです。あの手のように別れた竹のエッジが、背中の局面に絶妙にフィットしてイイ具合にかいてくれますよね!定規でも代用可ですが、何か物足りない。かといって、洗濯板のようなギザギザだったら絶対不快。
人の背中にフィットする形が孫の手だったように、猫ちゃんにフィットするのがこの『ねこじゃすり』なのかもです。にしても、このやすりの凸凹の微妙な差がわかるくらい、猫ちゃんの体ってデリケートなんですね~。
だけど、体を撫でてもらって気持ちよし、というだけでなく、『ねこじゃすり』は、コミュニケーションの一つともなっているそう。猫ちゃん達にとっては自分の舌で体をなめてきれいにするグルーミングは大切なコミュニケーションの一つのようです。
「うちに出入りしている、保護猫のモモちゃんにも試してみたんです。モモちゃんは3年間ほどは、触らせてくれなくて(泣)。でも、この『ねこじゃすり』をきっかけに仲良くなれたんですね。今では家の窓から見える道路にお腹を見せて寝ていたりするんですが、“あれしてくれ~”っていう合図みたいで(笑)もちろん呼ばれたら、私も喜んで『ねこじゃすり』を持っていきますよ!」
というエピソードも!モモちゃんもワタオカさんもよかったですね!
私たち人も、体のかゆいところを誰かにポリポリ掻いてもらったり、美容院で丁寧にシャンプーしてもらったり、自分でもまあ出来なくはないですが、誰かにお願いした方が気持ちよいですし、お互いに絆が生まれる気がします(笑)
猫ちゃんも誰かにやってもらった方が気持ちいいんだ!ってことがわかって「同じだね~」と、なんだかほっこりしました^^
「モモちゃんと私たちが仲良くなれたように、『ねこじゃすり』が皆さんと猫ちゃんとの関係がより良いものになるようお手伝いができたら」とワタオカさん。
ワタオカさんに寄せられるお客様からの声も「猫ちゃんと仲良くなりたい」「近づきたい」などなど、愛する猫ちゃんに「何かしてあげたい…!」と飼い主さんたちからの切実なものばかりだそうな…。
そう、次に『ねこじゃすり』を試すのはこれを読んでいるあなたかもしれませんね!
~ 番外編 やすりの世界をちょっとご紹介いたしましょう ~
やすりの始まりは古く、江戸時代の刀作りが起源になるそうです。左の写真は、明治・大正のやすり工場の様子。右が現在ワタオカさんが使われている機械です。 やすりを作るところを少しだけ見学させていただいたのですが、すごいんですよ!「やすりは工程数が多くて、緻密な道具なんです。この小さな面に包丁が並んでいると考えてもらえたら…」とワタオカさん。そんなに精密な道具だったとはびっくり!
やすりを漢字にすると、金ヘンに慮る(おもんぱかる)と書くそうです。「自分の身を削って、相手を削る。そんな意味があるようです。漢字に込められたこの理念はこれからも引き継いでいきたいと思っています。」と話してくださったのはワタオカ社長。鑢という漢字は、商品のパッケージにもしっかりプリントされています。
削らないやすりという新しいコンセプトで生まれたのが、この2つ。(左側:爪やすり、右側:かかとやすり)
スタイリッシュな形は、本当にやすりに見えない!
そして新たに『ねこじゃすり』がやすりの可能性を開く製品の仲間に加わりました。