写真:浜田一男
天国にいる愛犬との約束。捨てられた“命”の幸せのために
「愛犬との約束が、
譲渡活動のボランティアのきっかけに」
平澤さんが初めての愛犬・茶々と出会ったのは、平成10年の夏。
犬が苦手だったという平澤さんですが、子どもに恵まれなかったことと犬が大好きなご主人の勧めもあって、犬を家族に迎えようと考えたと言います。
「最初はペットショップから犬を迎えようと思ったのですが、職場の後輩から、動物愛護指導センターのことを聞き、その頃から週末のたびにセンターに見学に行くようになりました。」
犬のことを全く知らなかった平澤さんは、多くの犬が飼い主に捨てられたり、野犬となってここに収容されていることを知り、犬を飼うなら行き場のない子たちを家族に迎え入れようと考え始めます。 「その譲渡会で出会って家族となったのが、ミックス犬の子犬の茶々でした。でも、犬が苦手だという気持ちが抜けず、茶々がうちに来た時には、犬を飼ったことを後悔しました。」
「返したい」そんな気持ちも湧きましたが、譲渡会では「終生大切に飼う」という誓約書にもサインしてしまったため、平澤さんは我慢して茶々の面倒を見ることに。 当初は犬の散歩もご主人と一緒でなければ、怖くて行けないほどでしたが、茶々の一途な性格が、平澤さんの心に変化をもたらしました。 「本当にいい子で、ただかわいくて、かわいくて、日に日に愛情が倍増していきました。子どもに恵まれなかった私たち夫婦を、茶々が、〝お父さん〟〝お母さん〟にしてくれたんです。」
我が子となった茶々への愛情が増すと同時に、平澤さんは、犬のことをもっと勉強したいと、様々な検定試験に臨んだり、資格を取得。 その後も多くの幸せと喜びを平澤さん夫婦にもたらした茶々でしたが、14年が過ぎ、愛犬家なら誰もが経験する「我が子の老いと死」が目前に迫ってきたのです。
「天国にいる愛犬に恩返ししたい」
多くの「心の財産」を茶々からもらった平澤さん。ペットロスに陥るのではなく、茶々の死からこんなことを考えたと言います。 「いつか自分が死んで天国にいったら茶々はきっと迎えに来てくれるでしょう。その時に、茶々に〝お母さん、犬たちのためにこんなことがんばってやってきたよ!〟と、胸を張って報告できる何かがしたい、そう思ったんです。」 その思いが後押しして、平澤さんは茶々が譲渡された同センターで、譲渡会のお手伝いをボランティアで始めるようになりました。
「よりよい啓発と、
官民の連携プレーで、譲渡につなげる」
平澤さんがボランティアでお手伝いをしている栃木県動物愛護指導センターの「子犬の譲渡会」は、毎月一回行われます。譲渡できるのは、栃木県在住で、譲渡事前講習会を受講済の住民です。 終生の適性飼養、飼育を目的としているため、63歳以上の希望者には、若い世代家族の飼養継続の意思確認を行います。
譲渡される子犬たちは、収容されてからの1、2ヶ月間で、センター職員の懸命な世話としつけ、そしてたくさんの愛情を受けて、社会化も完璧。健康状態も管理され、手入れをされた子犬たちは、みなピカピカで元気いっぱいです。
平澤さんは、そんな子犬たちの譲渡会当日に、譲渡希望者の受付、譲渡書類の回収や整理、譲渡用の子犬を新しい飼い主さんに手渡す補佐を主に行っています。 譲渡会は平日に行われるため、仕事の時間休暇を利用して、ボランティアに参加しなくてはなりません。それでも毎月欠かさず譲渡会の手伝いに来るのには、やはり亡き茶々との約束があるからだと言います。 「捨てられ、不要とされた命だからこそ、子犬たちには今度こそ、必ず幸せになってほしい。それが、同じようにこのセンターで出会った茶々の願いだと思います。 これから犬を飼う人たちの中に不安があるのなら、不安を取り除き、犬との暮らしが、いかに幸せで喜びが多いかを伝えるため、お手伝いができればと思っています。」
天国の愛犬・茶々との約束は、平澤さんのボランティア活動で、確実に果たされようとしています。
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