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特定非営利活動法人動物愛護社会科推進協会HAPP

古川 圭紀さん

東京都杉並区在住。柴犬3匹と暮らしながら、子育てに奮闘中―。動物愛護のボランティア活動の傍ら、小学校での紙芝居ボランティア等、子どもへの「命の教育」にも力を入れている。

杉並区動物適正飼養普及員(杉並どうぶつ相談員)
動物愛護社会化推進協会紙芝居サポーター・フレンド会員
動物愛護社会化推進協会「犬の飼い主検定」専門級合格者

「よいしせいを、してください。これから、どうとくのじゅぎょうを、はじめます!」
東京都杉並区立第四小学校の2年生児童、40名の元気なあいさつで、道徳授業が始まりました。その日、授業を担当するのは、杉並区動物適正飼養普及員(杉並どうぶつ相談員)の古川圭紀さん。紙芝居の読み聞かせボランティアとして、この学校で授業を行っています。 小学生の娘さんと、3匹の愛犬と暮らす古川さんが、このボランティアを始めたのはちょうど3年前―。「幼年期から、命をいつくしみ、大切にすることを知ってほしい。」そう語る古川さんに、今回は「小さな命」の紙芝居ボランティアについてお話を伺いました。

「命って、なあに―?」
「命のぬくもり」そして「命の輝き」を子どもに伝える
「小さな命」の紙芝居

娘に対する願いが、紙芝居ボランティアのきっかけに

古川さんが、紙芝居ボランティアを行うようになったのは、平成26年―。古川さんが会員となっている動物愛護社会化推進協会(以下HAPP)からのお知らせがきっかけでした。
「紙芝居サポーターとして、それぞれ自分たちが住む地域で、子どもたちに紙芝居の読み聞かせをするボランティアを募集していました。紙芝居はHAPPが作成したオリジナル紙芝居で、捨てられた子犬の話を、子どもたちに読み聞かせるというものです。」

犬が大好きで、自身も3匹の犬を飼っている古川さんですが、紙芝居サポーターとしてボランティアをやろうと思ったのは、犬ではなく別の理由からでした。

犬好き・ボランティアをする古川さん家族・柴犬

▲ 古川さんご家族

「まだ娘が幼稚園に入る前のことです。子どもがアリを踏みつぶしているのを両親も祖父母も注意せず、一緒になって踏んでいるのを見てショックを受けたんです。平気で生き物を踏みにじる。子育て世代としてその姿に危機感を感じました…。」

自分の娘には、生き物の命を大切にし、命を護れる人になってほしい―。「幼いころからの命の教育は、思いやりある人間になるために大切。
それは自分の子どもだけではなく、すべての子どもに対してだと思いました。

どちらか一方ではなくお互いを思いやる気持ちがなければ、平和は訪れないからです。」古川さんは紙芝居サポーターとして、命の大切さをできるだけ多くの子どもたちに伝えたいと、近くの学校に働きかけました。

道徳で最も大切とされる〝生命尊重〟を子どもたちに、わかりやすく伝える

古川さんの紙芝居実施対象年齢は小学校低学年児童です。紙芝居のタイトルは「ゆれるシッポ」。お母さん犬と一緒に人間に捨てられた子犬「きらら」が主人公です。 実話に基づいて創られたため、絵ではなく写真紙芝居であることが大きな特徴です。紙芝居の前に古川さんが「どうして人間は犬を捨てるの?」と聞くと、子どもたちは「飼うのが面倒。」「うんちがきたない。」「かわいくない。」「うるさい。」と次々と答えます。

動物愛護センターに送られた犬のお話・紙芝居

▲ 授業の様子

いよいよ紙芝居の始まりです。子どもたちの目は紙芝居にくぎ付け。捨てられたきららは、お母さん犬と一緒に動物愛護センター(紙芝居中では暗い部屋)に送られ、お母さん犬とは別の部屋に入れられて、離れ離れになってしまいます。
その後、きららは優しい人間に救われて、一緒に暮らすことになりました。幸せな毎日に、きららのシッポはいつもゆれています。それでもお母さん犬のことがとても心配なきらら。
そして、お話の最後にお母さん犬との再会を果たします。お母さん犬も優しい人間に助けられ、ゆれるシッポの幸せな毎日を送っていたのです。

お話はハッピーエンドでした。同時に子どもたちの顔にホッと安堵の笑みが広がります。
「きららが捨てられたように、世話が面倒だからって、命をぽいっと捨てちゃうのも人間。でもきららが最後幸せになれたように、命を大切にできるのも人間です。みんなはどっちの人間になりたい?」 古川さんが聞くと、子どもたちは「大切にできる人間!」と一斉に声を合わせました。「そうだね!みんなは命をボロボロにする力も、ピカピカにする力も持っているんだよ。その力をどっちに使いたい?」「ピカピカにするほうに使いたい!」子どもたちの中に迷いはありません。 「うん!じゃあ、みんなの力で誰かの心がピカピカになれたら、みんなの心はどうなるかな?」「ぼくらの心も、すっごくピカピカになれる!」

誰かを幸せにすることは、自分を幸せにすること―。子どもたちは、こんな難しいことでも古川さんの紙芝居を通してなら簡単に気づくことができるのです。

道徳教育として説得力のある授業

古川さんの授業は、担任の先生からも好評です。「私はすでに3回、古川さんの紙芝居を見ていますが、古川さんの紙芝居を通して、子どもたちの思いが、見えるようになりました。この子にはこんな気持ちがあったんだとか、こんなことを考えているんだと、教師にとっては子どもたちの気持ちがわかる時間でもあります。」 普段はめったに話を聞かない子でも、古川さんの話に引き込まれ、大きな反応を見せると言います。

犬や猫は私たち人間の家族として、最も身近な動物。その命のぬくもりを丁寧に伝えていくことができれば、動物も友達も大切にできる子どもに育ってくれるはず―。

子どもの道徳教育・生命尊重

▲ 紙芝居の感想文を書く子どもたち

45分の授業は、紙芝居の感想文を書いて終わりです。

「きらら、名前のとおりきらきらになってよかったね。」「最初は悲しそうだったけど、幸せになって今は元気でよかったね。」「かわいかったよ!きらら。大事にしたいです。」「うれしそうでよかったな。」
どの言葉も、きららの幸せを心から喜ぶ〝やさしさ〟が表れています。

誰かの幸せを自分のことのようにうれしいと感じる―。〝やさしさ〟や〝思いやり〟は、紙芝居の小さな世界からでも上手に伝えることができるのです。

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(ペピイカタログ2018年春夏号掲載)

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