8回目を迎えるこちらのコラム。今回はオーダーメードのオリジナル犬服を販売される「Rish-Rosh(リッシュ ロッシュ)」店長の舟木真貴子さんに、14年9ヶ月をともに過ごした愛犬「ピットくん」との思い出や失った時のお話についてお聞きしました。
お話を伺ったのは…
Rish Rosh 店長 舟木真貴子さん
オリジナル犬服販売Rish-Rosh店長。店名はアイリッシュ・セッターのIRishと保護犬から家族になった愛犬Rosh-cocoから名づけられたそう。
アイリッシュ・セッターのIRishとロッシュココくんのRoshが店名の由来。
私の人生でたった1匹のソウルメイト
アイリッシュ・セッターの男の子「ピットくん」と出会ったのは15年前のこと。
我が家には3匹の先住犬ミニチュア・ロング・ダックスフンドもいましたが、夫婦ともに「大型犬と暮らしたい」という思いが強くマンションを手放して、大型犬を迎える準備を整えていました。そんな時、たまたま立ち寄ったペットショップで出会ったのがピットです。つまらなそうな顔で、生後6ヶ月を過ぎた仔犬とはいえない体を横たえる姿に「うちの子になる!?」と連れ帰りました。
新しく家族になったピットは、頭の上に黄色いお花が咲いているような陽気な子でした。アイリッシュ・セッターという犬種は明るく屈託のない子が多く、ピットはまさにtheアイリッシュ。朝夕たっぷりのお散歩と自由運動、たくさんの手作りご飯でみるみる大きくなっていきました。しかし、生後9ヶ月で股関節形成不全と診断されて手術が必要に。術後には一歩ずつ歩く練習から、一緒に入浴して行う股関節の可動域を広げるマッサージ、筋肉に良いと聞いたご飯やサプリまで、あらゆる手を尽くしました。私とピットに絆が生まれたのは、こうしたリハビリや筋力作りの暮らしがあったからだと思います。
着実に元気を取り戻したピットは、陽気なイタリア男のようにいつも隣にいてくれました。私が体調を崩した時にはずっとそばにいてくれて、夫が散歩に連れ出そうとすると「ウゥーッ」と唸るのです。ふだんは怒らない子でしたが、その時だけは怒っていましたね。私と生きるために生まれてきてくれた、人生でたった1匹の子だったと思っています。
ピットくんはパパと遊ぶのが大好き!雪山にも行きました。
愛しさを抱きしめれば心があたたかくなる
だからこそあの子を亡くした痛みはとても大きなものでした。
2018年11月14日の夕方、それまで元気だったピットが倒れてしまいました。病院に駆け込んで脳圧を下げる治療や点滴をしていただきましたが、意識が戻らない状態。家に連れて帰り、夫が後ろからピットを抱きしめ、私は前から呼びかけて一晩中励ましました。15日の朝も病院で点滴を打ち、夕方の診察では「山は越えました」と言っていただきましたが、家に連れて帰ってしばらくするとピットの呼吸が荒くなり、すっと身体を脱ぎ捨てたのがわかりました。きっちり24時間、お別れの時間をくれたピットは、最期まで私たちの真ん中にいました。 心の広さ、自由さ、何事も受け入れる柔らかさ・・・・・・私にないものをすべて持っていたピットは私の半分だと感じていました。
だからこそ悲しみは深く「もう新しい子は迎えられない」と思うほど。
しかし、本当に不思議なご縁によって、最初の月命日に1匹、その20日後にもう1匹のアイリッシュ・セッターが我が家にやってきてくれました。あまりに悲しむ私たちと弟であるロッシュココのために、ピットが連れてきた妹たちかもしれません。
不思議なご縁で家族に加わったアイリッシュ・セッターのぴあのちゃんとラッキーちゃん。
ピットの記憶や面影を思って、今も泣かない日はありません。
悲しいぶんだけ愛した証、寂しいぶんだけ幸せだった証。人の7倍の速度で駆け抜けていく彼らとの暮らしは、悲しみと寂しさを含めてともに生きたということだと感じています。
ある方の本に「ペットは大切な人のところから旅立つ時、魂のひとかけらを残していく」という一文がありました。
寂しさは消えませんが、大切なあの子への愛しさを抱きしめるとあたたかく幸せな気持ちに。ピットは私に必要なこと、変わるべきこと、知るべきこと、出会うべき人のすべてを整えてくれました。
DOG は反対から読むとGOD。神様なのかもしれません。大切な子の魂はともにあると信じています。
ネームの入ったチョーカーはキャンピングカーに置き、今も一緒に旅をしています。
Rish-Rosh店長 舟木真貴子さん
このコラムについて
『 あなたはどう向き合う? ペットロス 』
かけがえのない存在を失った時、私たちはどうしたらいいのでしょうか。気持ちの変化やその時の心境を、さまざまな方の声を通して、一緒に考えていこうというコラムです。