2019年9月9日に台風15号、10月12日には台風19号と立て続けに非常に大型の台風が日本列島を襲いました。
特に千葉県は、台風15号の強風の影響で、多くの建物の屋根や壁が損壊。さらにライフラインも電気の送電塔に千葉県内で約2000本の電柱が倒壊。
そのため停電は千葉県内でピーク時約64万戸にもおよび、被害が広範囲だった事もあり異例に長期化しました。
そんな中、ペットを飼っている方の生活がどのようであったか、後日、被害の大きかった千葉県館山市で取材しました。
取材地はテレビドラマ「ビーチボーイズ」(1997)のロケ地にもなった、千葉県館山市相浜地区。
伊豆諸島や富士山も望める美しい海岸線は、サーファーの憧れの地でもあります。
取材のこの日(2019年12月3日)も南国を思わせる素晴らしい青空が広がっていましたが、台風被害から約3か月経っても沢山の被災家屋の屋根には応急処置のブルーシートが。
相浜湾にある相浜漁協の建物の屋根、近隣の旅館やレストランの壁や屋根も吹き飛びました。
停電、それは暑さとの戦いでした。携帯の通信は10日間ダウン。
猫を6頭飼っている、A.Hさんに災害時の体験を伺いました。
「我が家の停電は比較的早く復旧しましたが、同じ地域でもお宅によっては数日間に及んだようです。台風の通過した翌日の9月10日からは気温がどんどん上がり始めたのですが、扇風機も使えない状況では、暑さがとにかく辛かったです。人間は冷感シートのような敷物でしのぎましたが、猫たちも辛かったと思います。」
「携帯電話は10日間使えませんでした。充電の問題ではなく、通信そのものができなかったのです。保護猫仲間との連携にも苦労しました。」
▲ A.Hさんの猫小屋と猫達
猫達を避難させるのに、大型ケージを運べない。
「海岸がとても近いので高潮に警戒して、飼っている猫たちは早めに、比較的高台の知り合いの家に預かってもらうことにしました。ところが、ここで困ったことが。」
A.Hさん宅の周辺は昔からの住宅街で道幅が広くないため、大型車には不向き。
必然的に小型車になるので、「複数の猫を入れられるケージは大きすぎて車にうまく積めないのです。」
結局、数少ないキャリーを使って車で何往復もすることに。
「小型のキャリーを頭数に合うだけ用意しておけば、避難ももっとスムーズだったと後悔しました。」
ガソリンは1回5リットルの給油制限。スタンドには長蛇の列が。
停電になると、ガソリンスタンドの給油ポンプも動きません。停電が解消するまでは1回5リットルの給油制限が続きました。
店員さんが手回しのポンプで給油するので、それが限界だったのです。当然給油待ちの長い列ができ、2時間並んでやっと手に入れた5リットルの燃料。
ここで不安になったのが猫達のごはんです。
「普段からまとめ買いはしているけれど、残り少なくなったら遠出しなければ手に入りません。近くのスーパーには品物が無くなるので。そんな時、車移動が当たり前のこの地域では、燃料不足は深刻です。だから、猫達の食料も、普段から余裕を持って備蓄しないといけませんね。」
地震、津波は常に意識していたけれど。
「防災といえば地震のことばかり考えていました。ここでは津波が一番の恐怖ですから。でもまさか、房総半島を台風が直撃して、こんな大きな被害を出すなんて。」
「この辺りは自然災害の少ない地域だと、昔から住んでいる人は自慢していたのです。でも、気候が変わってきて、これからは台風が常に襲ってくるかも。」
「そうなると毎年何回もですから、準備も違って来るのかな。どんな備えが必要か見直してみたいと思います。」
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▲ 体験談をお話しいだいたA.Hさんと愛猫のいくな君
地域猫が「避難」した食堂。
残されて彷徨っていた飼い猫にも気をかけて。
海岸近くにある、お店にも取材に応じていただきました。
「相浜亭」。港から直送の新鮮な海鮮料理が食べられることから、地元だけでなく遠くからもファンがやって来る有名な食堂です。
お店の方達は、猫好きで数頭の猫を飼っており、手作りの遊び場兼用の小屋が岸壁近くにも設置されています。
今回の台風15号と19号の時には、幸い食堂の建物は被害をほとんど受けず、飼い主が避難した為か、置いていかれてしまった近所の飼い猫や、地域猫の面倒も見たそう。
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「地域猫は自分達からここへ集まってきました。」
「飼い猫と思われる猫は何日かこの辺りを彷徨っていました。
よく見かけていたので、多分近所の飼い猫。避難する時に連れて行って貰えなかったか、はぐれたのでしょう。少しの間、見守ってやることにしました。」(お店のSさん談)
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▲ 岸壁に並んだ相浜亭所有の遊び場兼用の猫小屋
「想定外」はこれからも。ペットと助かる方法を再点検する時期。
最近自然災害について「想定外」「過去にない」という言葉がよく聞かれます。今回の取材においても、台風への備えの経験がなかったことや、予想もしなかった長期停電によって様々な苦労をなさったお話が聞けました。
また、2018年台風23号の大阪のように、台風に不慣れなわけではない地域でも今まで経験したことのない強さの暴風にみまわれています。
これまでの経験にとらわれず、防災について再点検する時期に来ているのではないでしょうか。