「地震・洪水・台風・火災・・・災害時に自分自身も愛犬愛猫も助かる準備はできているのかな?」というギモンから、さまざまな方の声を通して、ペットとの防災について一緒に考えていく連載コラム。第1回目は『人も動物も幸せな社会』を目指し、同行避難や子ども達への教育など様々な課題の情報発信に取り組む公益社団法人Knotsの理事長・冨永佳与子さんに、ペピイがお話を伺いました。
阪神大震災の経験が伝える地域コミュニティの大切さ
1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災。10万棟の家屋が全壊し、推定9,300頭の犬猫が被災しました。そんな混乱の中でも、20日には兵庫県南部地震動物救援東京本部が、翌21日には現地本部が設置され、早期から動物の救援活動は始められました。
同年2月、(社)日本愛玩動物協会のアンケートによると、迷わず避難所に連れてきた人は犬63.5%、猫42.5%。トラブルが表面化せずに共存できている避難所は約70%でした。そこまで低い結果にならなかったのは、地域に顔見知りの人が多く、「助かってよかったね」と言い合える信頼関係の強い地域コミュニティが存在していたからだとも考えられます。
仮設住宅に移る段階になるとペットの入居はすんなりとは認められませんでした。犬猫と一緒に暮らせる場所の確保が難しくなり、所有権の放棄や犬猫の安楽死を選ぶケースもありました。最終的には、犬猫と暮らせる公営住宅もできています。しかし、仮設住宅などは住み慣れた地域にできるわけではないため、コミュニティが失われてしまうという問題は、現在も課題となっています。
2016年の熊本地震では一時預かり支援も充実するなど、公的な援助の在り方に発展がありましたが、地域の繋がりが弱いとされる現代の都会で避難生活をどのように送れるか疑問は残ります。
助かるために考えておきたい我が家に合った避難スタイル
2018年3月に環境省が「人とペットの災害対策ガイドライン」を発表。災害対策は「動物の救援」から「飼い主の飼育継続支援」になりましたが、災害直後は「公助」に大きな役割を期待することが難しく、「自助」により自分自身や愛犬達の身を守ることが大切だと明言されています。
災害直後は飼い主さんが助かることが最優先ですが、家族である犬猫も可能な限り守りたいはず。それなら、今からでも我が家に合った避難スタイルを考え始めましょう。
海や川に近いなら津波や浸水、山が近いなら土砂崩れなど『自分が住む地域のリスクを知り、どこへどう逃げるか』を想定してみましょう。状況によっては自宅にとどまる方が良いかもしれません。スムーズに逃げて、安心できる避難生活を過ごすためにはクレート(キャリーやケージ)に慣れておき、迷子になった時に備えてマイクロチップを装着しておくとうちの子が判明しやすいですね。
避難生活が長びくと「共助」も大切になります。避難所では地域の方々と過ごすことになるので、普段から犬猫を可愛がってもらいましょう。犬同士も仲良しだと安心です。避難所は犬猫不可の規定はありませんが、管理責任者により決定されるので事前に確認しておく方が良いでしょう。
マンションに住んでいるなら、管理組合の規定や協力体制をみんなで確認してみましょう。相談を受けられたマンションの事例では他の住民がどんな犬猫を飼っているかご存知のないケースもありました。もちろん、地域の方々や獣医師さんとの連携もとても重要です。
「自助」と「共助」がまとまれば、救援物資の配送先などの要望や提案を「公助」に出しやすくなります。その積み重ねが同行避難だけでなく、高齢者や病気の人などたくさんの人が助かる仕組みに繋がり、幅広い社会課題の解決に貢献できると冨永さんは話します。
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地震の時に寝室にいたので、玄関だけでなく寝室にもリードを置いています。
ジョン、ジャック、ジュニア(Mシュナウザー) -
電池式のラジオ、ソーラー充電のLEDライト、マイカーのテレビが役立ちました。
隼(シバ) -
台風の時は階段の柵が外れるほどの酷い暴風雨で外出すら危険だったので自宅で過ごすしかなかったです。
こゆき(MIX) -
非難する間もなく津波が来てしまい、猫はキャリーに入れて屋根の上で一晩過ごしました。
ミル、つむぎ(MIX)
『想定内』を増やして後悔のない避難をしよう
犬猫と暮らすとPTSDが緩和されるという研究もあり、犬猫が避難所の雰囲気を和ませてくれることもあります。
大きな災害が発生すると『想定外』ばかり起きますが、事前の準備で『想定内』を増やせば、最善の方法で家族を守ることができます。「これを知っていれば、助けてあげられたのに…」そんな後悔をしてほしくありません。一緒に暮らせない時は譲渡という方法もありますが、一緒に助かったのなら納得がいくまでうちの子と生きていってほしいです。そのためにも、今できることを考えてみませんか?
公益社団法人Knots(ノッツ)
「⼈も(ヒト以外の)動物も幸せな社会」の進展に寄与するべ く、⼈と動物のより良い共⽣を推進し、⼈を含めた全ての動物達 を幸せにするためのイベント・シンポジウムなどの啓発、⼦ども 達への教育、⼈と動物の共⽣にかかる研究・相談・情報提供など の事業を展開。
冨永佳与子(とみなが・かよこ)さん
公益社団法人Knots理事長
愛玩動物飼養管理士
阪神・淡路⼤震災の1年後に⾏われた被災動物のその後の調査に参加。((社)⽇本愛玩動物協会(当時)による)2000年NPO法⼈Knots(2010年公益社団法⼈Knots)設⽴時より、代表(理事⻑)。
兵庫県ワイルドライフ・マネージメント計画・運営協議会、農林⽔産省獣医事審議会等の委員を歴任。現在は、奈良県いのちの教育研究協議会副会⻑を務める。
国⽴⼤学法⼈滋賀⼤学広報アドバイザー、武庫川⼥⼦⼤学⾮常勤講師、⻑崎市観光⼤使。