災害を怖がり過ぎる必要はありませんが、最低限の備えは大切です。愛犬・愛猫とスムーズに同行避難をおこない、その後の避難生活を過ごしやすくするための備えについて前回のコラムで救護活動とその想いについて語ってくださった災害派遣獣医療チーム「福岡VMAT(ブイマット)」の船津敏弘先生にお伺いしました。
VMAT(ブイマット)「災害派遣獣医療チーム」とは?
獣医師、動物看護士、動物トレーナー、トリマーなど1チーム4~5名で構成。大規模災害や多くの傷病動物が発生した事故などの現場で急性期(概ね48時間以内)に活動できる機動性を持ち、専門的な訓練を受けた獣医療チームのことです。
福岡VMAT(ブイマット)について詳しくはコチラ
飼い主さんがしておきたい「最低限の備え」
持ち出し袋は3パターンを準備しておくと安心です。
01外出先用の携帯ポーチ(飼い主さん用)
いつも家にいるとは限りません。出かけ先で急に災害に巻き込まれることも考えられます。春や夏は涼感グッズ、秋や冬はあったかグッズを追加するなど、季節に合わせて中身を入れ替えることも忘れずに。
●ホイッスル
助けを呼ぶ時に叫び続けると声は枯れてしまいます。必ず入れておきましょう。
- ●ライト
- ●名前を書いた紙
- ●人間用携帯トイレ
- ●防災手ぬぐい
- ●カイロor冷却ジェルシート
- ●ブランケット
02同行避難用の持ち出し袋
素早く逃げ出せるように、すぐに持ち出せる軽さにしてリュックに入れておきましょう。グッズリストはこちら。ダウンロードしてプリントし、忘れ物がないかチェックしてみましょう。
03備蓄品
玄関など柱が多くて頑丈な場所に置いておけば、避難がひと段落した時に取りに帰れます。がけ崩れや水害が予想される場合は2階へ。
家族で置き場所を共有しておくと安心です。
●お水●いつものドライフードや療法食
●トイレシーツやトイレ砂、トイレ用品
など
ケージやキャリーに慣れる
キャリーは避難時に。ケージは避難施設内で住み分けをする時に役立ちます。
特に猫は抱っこで移動すると逃げる可能性が高いです。普段からキャリーをベッドや居場所として使い、慣らせておきましょう。
猫が逃げてしまった時は…
飼い主さんが猫が逃げた場所へ夜中にこっそり行き、小さな声で名前を呼んで耳を澄ませてみて。カサッと音がして見つかる場合があります。ほんの小さな反応を見逃さないことが発見につながります。
しつけや社会化をおこなう
●人や他の動物を怖がらないように慣らしておく。
他の犬とケンカをしないように社会化ができていれば、動物の一時預かり所にもお願いしやすいです。
●トイレのしつけ。
指示によってトイレができたり、ペットシーツでもできるようにしてください。
●犬猫の体を清潔に(抜け毛・におい)。
コームやタオルに慣れさせてください。
●「待て」「おいで」「おすわり」「ふせ」などを教え、むだにほえないようにしつける。
基本的なしつけは必ず犬猫の命を守ります。
●予防接種や寄生虫駆除
狂犬病や混合ワクチン、ノミ・ダニ・消化管内寄生虫の駆除は動物だけでなく人間の安全にも繋がります。
こんな準備も大切です
●安全な場所で飼育する。
地震で家具が倒れてきたり上から物が落ちてくることがないか、いつもの居場所の安全確認をしておきましょう。頑丈なケージを準備しておくとさらに安心です。
●首輪や迷子札、マイクロチップを装着しておく。
迷子になった時に連絡が届きやすいです。犬の場合は鑑札や狂犬病予防注射済票も着けておくと保護された場合にスムーズに対応してもらえます。
●携帯電話などでうちの子の写真を持ち歩く。
●避難所を事前に確認しておく。
●避難中の預け先を決める。
ちょっと離れた県外の親戚や友人ともしもの時にお互い助け合えるように約束を交わしておきましょう。
●家にペットがいることを玄関に表示。
飼い主さんが外出中に災害が起こった場合、帰宅が困難になるおそれがあります。
家が無人でも救助隊や保護団体がうちの子を発見できるように、ペットを飼っていることや、かかりつけの動物病院の名前を書いた紙を玄関に貼っておくとよいでしょう。
ペピイで販売中の防災対策グッズ
VMAT(ブイマット)の経験を経て、
船津先生が考えるこれからの防災対策
時期に応じて考えたい避難所の住み分け体制。
避難直後は犬猫もショックを受けているため静かですが、10日後くらいになるとストレスから吠え始めるなどしてトラブルが増えるように。人のストレスも溜まってきます。
避難後は1週間を目安に一般の人と動物連れの人の住み分けを始めたいですね。避難所すべてを動物と同居可能にすることは現実的ではないですが、避難所10ヵ所につき1~2ヵ所なら可能ではないでしょうか。
01発災直後
動物連れの人も一般の人もとにかく避難。緊張状態から犬猫も静かに過ごす傾向があります。
02発災後2~10日間
動物連れの人は専用の避難所に移動。トラブルが起きにくく、動物用の配給を運ぶ場所がわかりやすいので管理も簡単に。
避難所を分ければ、みんな安心♪
犬猫達の幸せのためにも目的を持って元気な避難生活を。
災害後は弱気になりがちですが、飼い主さんの元気がないと犬猫達にもそれが伝わって「あんなに飼い主さんが落ち込んでいたら、ボクももうダメだ…」と感じてしまって元気が出ません。それではお互いにマイナス効果です。
町の復興でも、友人のペットの世話を手伝うことでもよいので、飼い主さんが「まだ終わっていない。やらないと!」と気持ちを奮い立て、目的を持って再び元気になることが犬猫達の幸せにも繋がります。
船津先生
とにかく自分の命を第一に!
飼い主さんがいない愛犬愛猫ほどかわいそうな動物はいません。
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犬猫の方が逃げ足は速いので生き延びる確率が高いです。一瞬の迷いで生死が分かれますので、まずは自分が助かることを第一に考えてください。飼い主さんがいなくなった犬猫達は本当にかわいそうです。
飼い主さんが助かり、再びうちの子と出会って生活を始めることが最終的にうちの子の幸せにつながります。大切なうちの子のためにも、万が一の時は「自分の命」を第一に考えて生き延びてください。
お話くださった先生
船津敏弘先生
獣医師であり、動物環境科学研究所所長。
福岡県獣医師会としてVMAT(ブイマット)を発足。