第2回慢性腎臓病を防ぐ3つのルール
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ぜひ、あなたと愛するネコのためにお役立てください。
「慢性腎臓病」について獣医師に取材しました!
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日本獣医生命科学大学
宮川 優一先生獣医師。日本獣医生命科学大学・獣医内科学研究室第二・准教授。同大学の付属動物医療センターで腎臓科を担当。研究対象はネコやイヌの腎臓病・泌尿器疾患など。著書に『猫の腎臓病がわかる本』(女子栄養大学出版部)
下部尿路疾患の予防が大切!
慢性腎臓病を防ぐ3つのルール
第1回でご紹介した通り、ネコは水分が不足すると突発性膀胱炎や尿路結石症などの病気にかかりやすい。こうした下部尿路疾患は再発率が高く、慢性腎臓病のリスクを上げる可能性もあるため、予防することがとても大切です。
■ルール1「できるだけ水分を摂取させる」
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ウエットフードを積極的にあげる
ウエットフードは水分が75%程度あります。直接水を飲むのが苦手なネコでも、1日の水分摂取量が上がりやすいメリットが。
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ネコ好みの給水機を用意する
ネコによって好む給水器は異なります。静水だとあまり飲まないなら、流水の循環式給水器を置いてみましょう。冬場はぬるま湯にすると飲水量が上がることも。
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吸水器の場所を配慮する
ネコは食事場と水飲み場を分ける習性があります。フードと給水器は、離して置きましょう。ニオイの強いトイレのそばに給水器を置くのも避けて。
■ルール2「できるだけ運動させる」
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ネコのペースを尊重して一緒に遊ぶ
ネコじゃらし、ボール、電動タイプなど、さまざまなおもちゃでネコを遊ばせましょう。おもちゃで遊ばせることで、ネコは擬似的な狩猟を体験できます。
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キャットタワーで上下運動を促進
ネコは高いところを好む動物。キャットタワーを置くスペースがないなら、家具に段差をつけて高所をつくりましょう。
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運動不足はさまざまな病気のリスクを上げる
ネコは本来、少量頻回採食をする動物。「昆虫やネズミなどの獲物を捕って食べる」を繰り返します。一方、室内飼いされているペットのネコは、1日中限られた空間で過ごし、黙っていてもごはんが出てきます。こうした生活は、運動不足や肥満になりがち。活動量が少ないと、排尿も少なくなり、下部尿路疾患のリスクが上がります。ネコが高齢でないなら、ネコじゃらしなどを使って一緒に遊ぶ機会を増やしましょう。
■ルール3「できるだけストレスをなくす」
ストレスを感じているネコは、下部尿路疾患のひとつである突発性膀胱炎を発症します。
下のストレスチェックにあてはまる項目が多いほど、そのネコはストレスが少ないと言えるでしょう。
▲参考:女子栄養大学出版部「猫の腎臓病がわかる本」
人間同様、ネコの性格は千差万別。たとえば飼い主とのふれ合いを好むネコもいれば、ひとりでいることを好むネコも。愛猫の性格を考慮し、ストレス源になりやすいものを除去しましょう。
適切な対処で病気の進行が遅くなる!
慢性腎臓病の正しいケア
慢性腎臓病は進行具合によって1から4までのステージに分類されます。できるだけ早い段階で病気を発見して対処すれば、進行しにくくなります。そのため、1年に1回は健康診断を受けることが大切。ステージ1、2のまま進行しないで長生きするネコもたくさんいます!
ステージ1:高たんぱく食・高塩分食は避ける
三大栄養素のひとつであるたんぱく質には、リンが含まれています。腎臓の機能が低下するとリンが排出しにくくなり、それが慢性腎臓病の進行を早めます。高たんぱくなフードはリンの含有量も高め。慢性腎臓病が判明したら、たんぱく質の多い(40%以上)フードは避けましょう。また、塩分の多い食事も病状を悪化させるため、与えてはいけません。
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煮干しやハムは塩分が多い
煮干しやハムはネコにとって塩分が多め。健康なら少量食べても問題ありませんが、慢性腎臓病になったら与えないようにしましょう。
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グレインフリーはたんぱく質が多い
穀物を使用していないグレインフリーのフードは、肉や魚を主体にしています。たんぱく質が多いとリンも多いので、グレインフリーフードは避けて。
ステージ2:療法食を検討する
腎臓病用の療法食は、たんぱく質とリンが制限されています。ただし、たんぱく質を制限すると筋肉量が減りやすく、慢性腎臓病はやせるほど病状が悪化しやすくなります。「ステージ2=療法食」と決めつけず、獣医師に相談しながら療法食を始めるかどうか検討しましょう。
※療法食は、かかりつけの動物病院で購入しましょう。
ステージ3:できるだけ食欲を回復させる
ステージ3以降になると、食欲不振、元気消失、嘔吐などさまざまな症状が見られるようになります。慢性腎臓病は筋肉量が減ってやせてしまうと進行が早くなるため、“食べさせる”ことを優先しなければなりません。療法食を食べてくれないなら、種類を変える、リンの少ない市販食を与えるなどして、少しでも食べてもらうための工夫をしましょう。
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水分が多くてネコ好みのフードを与える
療法食を変えても食べないようなら、たんぱく質やリンの量がひかえめな市販フードを与えましょう。水分の多いウエットフードがオススメです。
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皮下補液を行う
慢性腎臓病の合併症である尿毒症を発症すると、食欲が大幅に低下します。皮下補液を行うと症状が改善され、食欲が回復しやすくなります。
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食欲増進剤やウエットフードを与える
皮下補液をしても食欲が戻らない場合は、食欲増進剤と流動食を与えます。一時的でも食欲を回復させて食べさせることが大切。
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チューブフィーディングを行う
尿毒症による脱水が重度の場合、点滴で細胞内に輸液を入れます。それでも食欲が戻らない場合は、カテーテルで流動食を流し込みます。
※すべてのネコに当てはまるわけではありません
ステージ4:できるだけ脱水を改善させる
ステージ4になっても、行うことはステージ3とほぼ同じ。ただし尿毒症が進行しているため、脱水症状が起こりやすくなります。週に2、3回以上は皮下補液を行うことになるでしょう。末期になると、ネコを楽にさせてあげる方法もなくなります。
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自宅で介護を行う場合も多い
皮下補液を行うため週に何度も通院するのは、ネコも飼い主も大きな負担に。自宅で輸液を行うのが基本です。
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腎臓病の末期は自宅で過ごす
何をやっても脱水症状が改善されず、食事を受けつけられないなら、もうできる治療はありません。入院は回復の見込みがないならする必要がないですし、ネコにとってもストレス。最期の時間は、家で一緒に過ごしましょう。
クレアチニン数値がステージの指標
血液検査数値の見方
慢性腎臓病は、血液検査の数値をもとにステージ分類されます。その指標となるのがクレアチニン。一般的に、この値が1. 6を超えていると慢性腎臓病が疑われます。ただし基準値を超えていなくても、何度かの検査で数値が上昇しているなら、腎臓の機能が低下しているおそれも。健康診断などで数値の変動に気づいたら、獣医師に相談しましょう。
ストレスの少ない暮らしを送る、水分を十分に摂取する、しっかり食べる、そして運動することで慢性腎臓病の進行を遅らせることができます。適切な対処を行い、ネコとの幸せな日々を長く過ごしましょう!
次回、第3回では「慢性腎臓病Q&A」をご紹介。
ぜひ参考にしてください。
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ネコDK
定価:880円
判型:A4ワイド
ページ数:96ページ
発行元:株式会社晋遊舎
晋遊舎公式サイト:https://www.shinyusha.co.jp/
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竹脇麻衣(たけわきまい)
青山学院大学法学部卒業。セツ・モードセミナ卒業。在学中にフリーでイラストレーターを始める。
〈制作実例〉『ねこ』コラム&イラスト「necolumn」(ネコ・パブリッシング発行)、sippo(朝日新聞社運営の犬・猫などのペットの情報サイト)でのコラム連載など。
公式サイト:https://www.takewaki.info/
日本一テストするネコ雑誌『ネコDK』が、ネコとの暮らしに役立つ情報をお届けします!
第2回も、ネコに多いことで知られている「慢性腎臓病」についてご紹介。慢性腎臓病を防ぐ3つのルールと、病気の悪化を防ぐ正しいケアを、獣医師に教えてもらいました!