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シニア犬・シニア猫と暮らす

【連載コラム】シニア犬・シニア猫と暮らす Vol.12

  • ペットケアサービスLet’s
  • vol12

    ペットケアサービス Let’s

    ボーダー

    飼い主さんのニーズにとことん応えるペットサービス!
    ここには、生後数か月の子犬から、
    18―19歳の高齢犬たちがやってくる―。
    「犬のがっこう」でもあり、老犬介護のデイサービスケア施設でもある「ペットケアサービスLet’s」
    すべての年齢の犬たちがイキイキ笑顔になれる秘密は、子犬と老犬たちが同じ場所で、時間を過ごすことから生まれる大きなメリット!
    人間の介護からヒントを得たLet’sのアイデアは、シニア犬たちを
    うんと元気に、生き生きと蘇らせる魔法の施設だ。
    一度、のぞいたら、誰もが自分の犬を預けてみたくなる犬たちの
    デイサービスとはいったいどんなサービスなのだろう―?

子犬もシニア犬も一緒だからより良い相乗効果が生まれる

東京営団地下鉄東西線「葛西」駅から徒歩15分ほどの環状7号線沿いに位置する「ペットケアサービスLet’s」。
同施設は主に「犬のがっこう」と「老犬介護」「ペットホテル」を担うサービス施設で、開所は2007年1月です。当時、愛犬家の中で「犬の学校」の認知度は高かったものの「年老いた愛犬の介護をプロに託す」という選択肢はあまり一般的ではありませんでした。

  • もともとペットシッターとして働いていたLet’sの代表取締役社長の三浦裕子さんは、老犬介護施設を開所するきっかけをこう話してくれました。

    「シッターをしている中には、いろんな犬がいて、当然シニア犬もいました。シッターは基本、飼い主さんの自宅に行ってお世話をするんですが、ペットをこちらで預かってほしいという要望も多数出てきました。それに応えるためには、犬を預かるための施設が必要です。だったら飼い主さんと犬たちのために、ニーズにあった施設をつくろうとLet‘sを開所したんです」

    三浦さんがLet’sを開所する時にこだわったのが「犬のがっこう」と「老犬介護」を一緒に行うことだったと言います。
    「以前テレビのニュースで、幼稚園と高齢者のデイサービスが一体になっている施設を見たんです。おじいちゃん、おばあちゃんが園児に鶴の折り方を教えてあげたり、すごく楽しそうにしている。お年寄りは子どもたちから元気をもらえるし、子どもは、いろんなことを教えてもらえるし、双方にとっていいことばかり。あ、これは犬でもイケるぞ!と思ったことがきっかけです」

  • Let’s代表取締役社長の三浦裕子さんと愛犬のえいと

    ▲Let’s代表取締役社長の三浦裕子さんと愛犬のえいと

そもそも犬は群れで暮らし、仲間と上手に折り合いをつけながら生きる生き物です。
シニア犬は若い犬と一緒に過ごすことで「若造には負けてられん!」と頑張り、若い犬たちはシニア犬からいろんなことを学ぶことで、犬同士のコミュニケーションの上達に繋がるメリットがあったのです。
「シニア犬はシニア犬で、若い犬たちの中できちんとルール作りをして、コミュニケーションをとろうとがんばる。これが刺激になって老化防止に繋がります。また若い子は、若い子で、老犬が指導をすることで犬同士の社会化トレーニングにもなるんです。犬も人間も同じです(笑)」

シニア犬のケアプランに合わせたサービスで見違えるように元気になる!

Let‘sでの犬の受け入れ数は最大25頭ほど。
現在三浦さんを含む9名のスタッフでお世話をしていますが、常時20頭以上の犬が、以下の日課で、「犬のがっこう」や「デイサービス」を利用しています。

「犬のがっこう」と「デイサービス」のスケジュール

シニア犬の割合は約4割で、10歳―15歳のシニア犬たちのことを、三浦さんたちスタッフは「ナイスミドル組」と呼んでいます。ナイスミドル組の犬たちは、人間で言えば前期高齢者のようなもの。そこそこ元気ですが、多少の運動機能の衰えも目立つため、個々のケアプランにあったサービスを行います。

  • サービスを受ける前にはカウンセリングを行い、愛犬の悩み事や困りごとを細かく聞いて対応していきます。マニュアル通りではなく個々のプログラムを作成して、その子にあったデイサービスをきめ細かく行うことがLet‘sのモットーです。

    「ナイスミドル組の子でもケアが必要な場合にはケアに時間をかけます。例えば関節が悪いなどの症状がある子にはリハビリなど運動機能改善をかかりつけの獣医師や動物看護士らと協力して行います。逆にナイスミドル組でも元気な子には、老化の予防策として、スタッフとの遊びを通して、“脳トレ”を行います」

  • 基本情報などを共有する当日の預かり犬ボード

    ▲基本情報などを共有する当日の預かり犬ボード

脳のトレーニングとして三浦さんが犬と楽しく行っているひとつが「じゃんけんポン」ゲーム。
これは「お手」と「お代わり」を基本にした脳を使う遊びのこと。

じゃんけんポンゲームって、どんな遊び?簡単だから愛犬と一緒に楽しもう!

1 飼い主さんが右手をパーと言って差し出せば、その手の上に犬が左前脚を出してお手のポーズでタッチ。
じゃんけんポンゲームをする三浦さん
じゃんけんポンゲームをする三浦さん
2 飼い主さんが左手をチョキと言って差し出せば、その手に犬が右前脚を出してお代わりのポーズでタッチ。
じゃんけんポンゲームをする三浦さん
じゃんけんポンゲームをする三浦さん
3 飼い主さんがグーを犬の鼻の前に出せば、犬はどちらの手も出さず「待て」のポーズ。
じゃんけんポンゲームをする三浦さん

これを「グーチョキパー」でスピードを上げて繰り返し、成功ごとにご褒美を与える。上手になったら、ご褒美の間隔をあけて、左手のチョキを右の方にずらして出してみたり難易度をあげる。
その時の正解は「お代わり」の右前脚でタッチが正解なのだが、出された方向が逆なのでつい「お手」の左前脚タッチになってしまったりするので、犬は考えながらやるようになる。
正解、不正解は脳トレの効果にはあまり関係ないので、楽しくやろう!

「あれ、これって何だったっけ?こっちだっけ?どっちだっけ?」と考えることが一番大切で、間違っても十分に効果があると三浦さんは言います。
また、おやつを隠し、嗅覚で探す「宝さがしゲーム」も脳トレにはとても有効だと言います。ただクンクン匂いを嗅ぐだけではなく「どこにあるのかな?」と必死に鼻を使って考えることがいいトレーニングになり、認知機能の低下も防ぐことができるのです。
犬それぞれにあったプログラムできめ細かくケアしてくれるため、デイサービスにやってくるナイスミドル組の飼い主さんの目的も様々-。

  • 「家のものを最近壊したりいたずらがひどくなったから再度トレーニングをしたい」「老化予防」「白内障が出てきて目が見えにくくなっているので留守番させるのが心配」「足腰を痛めているので運動機能回復のためのケア」「入院後、愛犬の筋力が落ちて不安」「一度試しに来たらあまりにも楽しそうなので何度も来ている」などですが、平日は毎日通所する犬もいるほど、Let’sの人気とケアやトレーニングの信頼度はピカいちです。
    また、東京都内という土地柄、距離に応じて有料にて愛犬の送迎にも対応してくれます。

  • 犬用バランスボールで、体幹トレーニング中

    ▲犬用バランスボールで、体幹トレーニング中

長期お預かりにも対応!よりベストに近いベターなサービスを目指す!

Let’sでは、通所プログラムだけではなく飼い主さんの「長期入院」や、その他の事情で一緒に暮らせなくなった犬を長期にわたって預かる「ショートステイ」もケアやトレーニング込みで行っています。
長期預かりは数頭に満たない数ですが、飼い主さんの事情を聞くと、そのニーズの重要性が伝わってきます。

  • その中の一頭、ミニチュアダックスフントで15歳のウィユは、一年ほど前に飼い主さんの事情で、飼い主さんから終生に渡ってLet’sでお世話をお願いされた犬です。
    飼い主によるペットの終生飼養は基本中の基本ですが、飼い主さんの高齢化や健康状態によっては、犬のお世話を続けられないこともあります。

    「どの飼い主さんも、本当は自宅で一緒に暮らしたいんです。でも、予期せぬことが起こるのも人生。どうしても一緒に暮らすことができなくなるケースもある。その時の選択肢としてLet’sがあればいいなと思っています。開所したばかりの頃は、老犬のための介護施設は稀だった時代。そのため、うちで預かった犬の飼い主さんが近所の犬友達から“そんなところに預けるなんて信じられない!”と、非難されたこともありました」

  • 預かり犬の15歳のウィユ

    ▲預かり犬の15歳のウィユ

確かに最期の時まで飼い主さんにお世話をしてもらうのが、犬にとっても「ベスト」と言えるでしょう。
しかし、愛犬への責任感から飼い主さんが無理をすることで、飼い主さん自身が体調を崩したり、それが原因で、愛犬との信頼関係が悪化する場合もあります。

  • こういった様々な悩み事や悪循環を取り除き、より「ベストに近いベター」な日常を続けるため、Let‘sのような犬の介護施設は今やなくてはならない存在です。
    また、Let’sでは、ウィユのように終生に渡って預かりを希望される場合でも、所有権はあくまでも飼い主さんのままで、譲渡という形では引き取らず、長期預かりというスタイルでお世話をしています。

    ウィユがLet’sに来て一年。ここでの生活にもずいぶん慣れた様子。若い犬たちにも負けないくらいよく遊び、毛並みも良くて、とても15歳には見えません。
    運動能力も抜群で、プレイルームで走り回っています。
    若い犬と一緒に遊ぶことが良い刺激となり、年長さんのウィユは意気揚々!若い犬たちもそんなウィユのことを理解しているのか、一歩下がって先輩犬を立てています。

  • アジリティのトレーニング中のウィユ

    ▲アジリティのトレーニング中のウィユ

「ここに来ると、認知症だと言われた老犬の夜鳴きも一週間から二週間でぴたりと収まります。要は、認知症というより、年をとってわがままになっているケースが多いんです。夜、鳴いていると飼い主さんは必ず起きて、自分にかまってくれる。犬はそれがわかっていて夜鳴きを続ける。あとは、日常の行動パターンです。ここでは若い犬も、老犬も、みんな規則正しく生活しているし、昼はケアやトレーニングで起きている時間が長いので、自然と夜、眠るようになります」

  • このように、規則正しい生活ときめ細かいケアや老化予防で、老犬も見違えるように生き生きと変化していきます。
    ウィユの飼い主さんは、当初、自身が世話をできなくなったことで、泣く泣く新しい飼い主さんを探そうとしていました。ところがLet’sに来てからウィユがあまりにも楽しそうに過ごしているので、最後まで自分の愛犬としてウィユをLet’sに託すことにしたと言います。

    ウィユの飼い主さんのようにいざ自分に何かあった時、Let’sのような場所があれば、愛犬を守るための選択肢は大きく広がるでしょう。
    信頼できる選択肢があれば、飼い主さんも「命を預かった責任」と「安心」を担保でき、愛犬とのQOL(生活の質)は飛躍的に向上するはずです。
    なぜなら、ウィユの飼い主さんは、ウィユを手放さず、最後まで自分の愛犬として飼い続けたかったからです。それが実現できたのがLet’sという存在だったのです。

  • いろんな年代の犬と遊ぶ15歳のウィユ

    ▲いろんな年代の犬と遊ぶ15歳のウィユ

最後に三浦さんは、犬たちが元気になるためには、飼い主さんの日ごろの犬に対する声掛けにも注意が必要だと教えてくれました。

「飼い主さんの言葉ひとつで、犬の気持ちは変わります。例えば、仕事から帰って来て出迎えた犬に “長い間お留守番させてごめんね” はNGです。“お留守番してくれてありがとう!” と笑顔で褒めてあげましょう!犬はすべてを見抜いています。飼い主さんがネガティブな言葉を使うと、それが犬に伝わってしまう。
いかなる時も、“ごめんね” ではなく “がんばったね!” “ありがとう” とポジティブな言葉でコミュニケーションをとってください」

三浦さんは実に楽しそうに、生後10か月になる自身の愛犬、えいとと華麗なる「じゃんけんポン」ゲームを何度も披露してくれました。

Let’sにいる犬たちは、飼い主さんと離れていても、みな笑顔-。
それは、犬という生き物を本当に愛し、プロフェッショナルな犬の保育士や介護スタッが、いつも笑顔で働いているからです。

Let’sのスタッフ

(取材:2024年5月)

ペットケアサービスLet’s
〒134-0083
東京都江戸川区中葛西2-19-13 1F
TEL:03-3675-0250
HP:https://lets-pet.com/
ペットケアサービスLet’s

取材・記事:今西 乃子(いまにし のりこ)

児童文学作家/特定非営利活動法人 動物愛護社会化推進協会理事/公益財団法人 日本動物愛護協会常任理事

主に児童書のノンフィクションを手掛ける傍ら、小・中学校で保護犬を題材とした「命の授業」を展開。
その数230カ所を超える。
主な著書に子どもたちに人気の「捨て犬・未来シリーズ」(岩崎書店)「犬たちをおくる日」(金の星社)など他多数。

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