ペットと共に生きること

「人と動物が一緒に暮らしていく」うえで、考えて欲しいことを、さまざまな取材を通して紹介します。ちょっぴり硬い話題が多いけれど、ほんの少し、一緒に考えてみませんか?

第2回:高齢者のために

 いきなり社会問題から入りますが、日本は今、そしてこれから、高齢化社会です。身の回りにも関連する話題があふれていて、30代半ばの僕でも、なんとなく考えなきゃ、なんて思っていたりもします。
考えるには早いかも知れませんが、やはり自分の老後は気になるわけです。家族のこと、友人のこと、地域のこと・・・。いずれペットと暮らすつもりなので、当然その子のことも。
体力がなくなったとき、どうしたらいいのだろう? 漠然とですが、考えてしまいます。
もちろん現在ペットと暮らしている方にとっては、もっと身近な話題、問題。

 今回おじゃました「日本ドッグホーム協会」は、そんな高齢化社会での人とペットについて、日々奮闘されている団体です。
協会があるのは、清水の次郎長や三保の松原で有名な静岡県静岡市清水区。そこにある本部と施設で、代表の白井睦子さんとご主人の昭夫さん、4名のスタッフ、135頭の犬に106匹の猫が暮らしています。犬や猫はすべて、高齢の飼い主と、やむにやまれぬ事情で離れることとなった動物たちです。そして彼らもほとんどが高齢。
そもそもここは、ペットを保護することが一番の目的ではありません。あくまで「高齢者が安心して暮らすためのお手伝い」をする施設。高齢な方の中にはペットを1人で飼っている方もいます。なかには体調を崩して入院が必要なのに「あの子が心配だから入院できない」という方もいるでしょう。そのような問題を抱える方のペットをここで引き取り、世話しているのです。引き取りの相談は、毎日あるそう。しかしすべてを引き受けるわけではなく、基本的には健康上の理由などで一緒に暮らせなくなくなった、「ペットを心配するあまりに生活に支障をきたしている」人のペットが対象。
“すべてを引き取るわけではなく”とあえて書いたのは、時折「必要がなくなったから」など、ペットを愛しているとは思えない相談もあるからです。
毎日スタッフ全員で犬の散歩や猫の世話。体調がよくない子を病院へ連れて行ったり、施設の掃除などで一日はあっという間だそう。施設にいる犬猫の数から考えると、相当な激務です。でもボランティア。
予防接種や病気の子の診療に獣医さんが協力してくれていますが、そこでも費用は薬品代など実費のみ。関わる人すべての心だけで、ここは成り立っているのです。
「動物を愛する高齢者が、少しでも安心して暮らせるように」という気持ちがすべて。

なぜそこまで?


代表の白井睦子さん(右)とこの春から仲間入りしたスタッフ。みんな、動物関係専門学校の卒業生です。彼女たちはいずれここから巣立ち、各地で支部を作っていく新しい力にもなっていきます。

毎日スタッフ全員で、一頭ずつ犬の散歩。ほかの犬と一緒に暮らせない犬は室内で世話するなど、それぞれの状況に応じて環境を用意しています。

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