ペットと共に生きること

「人と動物が一緒に暮らしていく」うえで、考えて欲しいことを、さまざまな取材を通して紹介します。ちょっぴり硬い話題が多いけれど、ほんの少し、一緒に考えてみませんか?

 協会が発足する前の白井さんは、ペットの美容院をされていました。その時のお客さんの中に3頭の犬を飼っている老夫婦がいたのですが、旦那さんが亡くなり、奥さんもやがて病気に。しかしそのお子さんは犬を飼えない状況。やがて「この子たちをよろしく」と白井さんに告げ、奥さんも亡くなられました。結局3頭を白井さんが引き取ったのですが、その子たちの世話をしているうちに、ペットと高齢者の太い絆に気付いたのだと言います。
このことをきっかけに2001年、協会がスタートしました。
問い合わせてきた高齢者1人1人の状況を細かく聞き、引き取るか、場合によっては有料の施設などを紹介するか判断します。引き取ったペットは飼われていた時の名前で呼ばれ、施設に来ればいつでも会える。諸事情で施設まで来ることができない方には、ペットの写真をカレンダーにして送ったり。
それでも、引き取りに必要なのは、協会のスタッフがペットを引き取りに行く交通費など実費のみ。その後の費用はかかりません。なぜなら、引き取り後のために最初から費用を設定してしまうと、どんな事情であっても引き取らなければならない場合が出てくるから。確かにお金で解決できる問題にしてしまうと、協会の主旨はやがて関係なくなります。ただ便利な施設と考えられてしまうかもしれません。そうなると遅かれ早かれ、このような施設はなくなってしまうでしょう。ここは、高齢者の生活を支えるための場所なのです。
だからボランティアとして活動されているのですが、日々の活動には、えさ代、医療費、施設維持費、人件費などさまざまな費用がかかります。しかし協会の運営費は、趣旨に賛同してもらった人々からの会費や寄付に頼っているため、ギリギリの状態どころか、毎月赤字が続くという現状。
やはり、個人での活動には限界があるのでは? と思わずにはいられません。

 そのあたりについて話を伺うと「確かにそうですが、社会的責任などを考えると、うしろは向いていられませんからね」とご主人の昭夫さん。
それどころか、「今は日本ドッグホーム協会の静岡の施設だけですが、もっともっと、できれば47都道府県すべてに施設を作り、多くの高齢者の暮らしを支えたい」との目標もあるそう。すでに支部計画にも着手されています。
ただ、資金不足のために計画の進行は遅れることとなるでしょう。有識者や業界関係者、そしてペットを飼う多くの人々にこのような施設の必要性を気付いてもらうことが、広がるための一番の方法かもしれませんね。多くの人の目、気持ちで支部計画を支えることができれば、そう願ってやみません。
考えてみると、高齢者には老人ホームから民間の有料福祉施設まで、さまざまな施設が用意されています。しかしペットにはどうでしょう。こんな時代ですから、そろそろあってもいいと個人的には思うのですが・・・。
縁側で、とまではいきませんが、高齢の犬と猫が一緒にひなたぼっこをしている。高齢のペットのための施設ができて、そんな微笑ましい老後を送ることができたら幸せだなぁ、そう思いませんか?

 話の最後に、「本当はね、うちのような施設が必要とされない社会になればいいと思うんです」と白井さん。
高齢になったペットの受け入れ施設だけでなく、ペットを飼えなくなったお年寄りがいれば、ご近所が面倒見てくれる。高齢になってどうしてもペットと暮らしたくなったら、動物愛護センターなどで成犬の里親になる。そういうことが世の中に根付けば、このような施設は役割を終えることができる、そこが最終的な目標だとおっしゃいました。
そうなることで、高齢者の暮らしにも安心が増えていくのでしょう。
日本ドッグホーム協会からの帰路、以前取材でお伺いした、とある県の動物愛護センターでのことを思い出しました。
そこでは週に1度、保護した犬の里親捜しをされているのですが、僕がおじゃましたとき、高齢の柴犬を引き取って帰る老夫婦に会いました。
「ずっと柴犬と暮らしていたんですけど、先日亡くなって。犬との暮らしが生き甲斐だったので、やはりまた飼おうと思って」とその夫婦はおっしゃいました。
それで、まずやってきたのが動物愛護センター。
「自分たちはもう高齢。いつか犬の世話もできなくなる時が必ずやってきます。それまで一緒に暮らせたら、保護された犬を、人の温もりで最後まで面倒見られたら、そう思っています」
その時の言葉がふと、脳裏に浮かびました。
ペットと共に長い時間を過ごしてきた高齢者にとって、その暮らしこそ生き甲斐なのです。たとえ一緒に暮らせない状況になったとしても、日本ドッグホーム協会のような施設があれば、希望を持って生活できる。「いつかまた一緒に暮らせるように」、そう思って治療に頑張れるかもしれません。
今はまだ小さな動き。でも白井さんご夫妻が見ているのは、その先の、大きな社会です。

「日本ドッグホーム協会」

〒424-0302
静岡県静岡市清水区小河内925-1

電話:054-360-1345

ファックス:054-360-1346

ホームページ
http://www.doghome.jp


元の飼い主が近くにいる場合、引き取ったペットを連れて行くこともあるそう。この方も、久しぶりの再会に感激されていたそうです。
※※協会で暮らしているペットたちに物資をお送りください。
ドッグフード(ドライ、プレミアムフード)やキャットフード(ドライならなんでも可)
ペットシート
古タオル
その他書き損じのハガキや未使用の切手、商品券など

物資を送る際、特に問い合わせは必要ありません。

※正会員、賛助会員、寄付もホームページで募集しています。