経済は上昇しないし、大人は下を向いて歩いているし、一体この国はどうなってしまうんだろう…。いきなり暗い話で恐縮ですが、僕だけでなく、多くの人が同じようなことを考えていると思います。
だったらせめて、子どもには明るい希望を、と願うのは親心からだけでなく、たまたま先に社会へ出た人間として、当然のこと。しかし大人は道を示すどころか、生きていくだけで精一杯。子どもの心も、不安でいっぱい。
彼らの心は大人が柔らかくしてあげなければなりません。
社団法人奈良県獣医師会には、学校飼育動物委員会という、有志の集まりがあります。奈良県下の小学校へ行き、動物とのふれあいを通して命の大切さを教えるのが、主な活動です。会の中心は、獣医師の三本隆行先生。
先生の所にとある学校の先生から「学校で飼っている動物の飼育方法を子どもに教えてほしい」という依頼があったことが、活動の発端でした。三本さんが訪ねてみると、そこには衰弱したウサギが。ほかの学校ではどうだろうと、個人的な興味からいくつかの学校を訪ねた三本さんは、飼い方指導の必要性を痛感したそうです。
そして、訪問活動はスタートします。もちろんボランティアです。
学校訪問の様子。動物とのふれあいを通したさまざまなプランで、子どもたちに命の大切さを訴えていきます |
噂を聞いて、先生の元にはほかの学校からも依頼が来るようになりました。そこで獣医師会のメンバーでネットワークを形成し、手分けしての訪問へと、活動は拡大。当初7,8名だったメンバーも今では20名ほどになり、年に1回、依頼のあった奈良県下の小学校を訪問しています。スタートして8年、飼い方指導だけだった訪問も、今ではイヌやネコ、ウサギ、モルモットを連れて。動物を子どもたちに触ってもらい、そこから命の大切さを感じてもらう。時には講演会、時には着ぐるみを着てのお芝居。さまざまな手法を使います。
「最近は、動物にさわったことがない子どもも多いんです。だからまずさわってもらい、その温かさを感じてもらうようにしています」と三本さん。
聴診器で動物の心音を聞き、今度は友達の心音を聞き、音を比べる。そんな体験も実施しているそう。