20世紀後半にはその被害と対策が叫ばれていたにもかかわらず、政府や自治体が重い腰を上げぬままいたずらに時が過ぎ、気付けばその被害は、日本全土へ拡大。
平成5年に東京、北海道、愛知など5都道府県だった被害報告は、
そのわずか10年後、平成15年になると41都道府県に拡大。
その後も増え続け、
平成20年はついに全都道府県で確認されるまでになってしまいました。
農作物への被害を数字で見てみると、平成18年度のアライグマによる農産物被害は全国で約1億6000万円、これは、平成14年度と比較して約2倍。
それだけではありません。
京都の社寺では、国宝や重要文化財までが被害に遭っています。
さて、ここまで被害が深刻になってきて初めて、
全国の自治体のなかにも、
対策に乗り出すところが現れ始めています。
対策の最終目標は、完全駆除。
なぜ駆除しなければならないのか?
それは、そもそも日本にいない生物であるアライグマが、
在来の生態系を破壊していくからです。
アライグマは雑食性。
野菜も食べれば果物も食べる。魚やニワトリだって食べる。
犬や猫が襲われたという報告も各地で出ています。
人間のエゴのために連れてこられ、そして、捨てられたアライグマ。
彼らには恐らく、罪はありません。
なのに、置かれている立場は、まさに「かわいさ余って憎さ百倍」
ただ、問題が深刻化の一途を辿っているのも事実。
国内の野生アライグマに高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)の感染歴があったことも昨年分かりました。
放っておいた結果、人間の生活を脅かす存在にまでなってしまったアライグマ。悲しい話ですが、駆除するしかないのです。人間が持ってきて、好き勝手に人間社会に取り込み、そして捨て、人間に害を与える存在になったがために駆除。
ペットとして多く飼われている犬や猫にも、同じ事があてはまると思いませんか?
飼ってみて、手に負えなくなったから捨てて、
野良犬や野良猫が増えすぎたからと対策を講じる。保護された犬や猫は、
ほんの一部だけが次の生活を見つけることができ、
多くは処分されている現実。
生きる権利、共に暮らす責任、そんなことを、もっともっと考えていく必要がある。
アライグマの事例を通して、強く思うのでした。