ペットと共に生きること

第18回 人と人を、つないでくれる。

ある障がい者の方から、こんな話を聞きました。
補助犬と暮らしていなかった頃は
街に出ても自分の存在が認められていなかった気がする。
小さな子どもが自分の親に「あの人どうして車いすなの?」
と聞くと、これまでは
「見ちゃダメ」なんて言われたこともあって、
まるで存在を否定されているようだった。

でも補助犬と暮らし、街に出るようになったら
「犬を撫でてもいですか?」
と聞いてくれるようになり、時には
障がいのことを聞いてくれる人にも会うようになった。
なんだか、社会に参加できた気がした。と。

介助犬という存在

奈良県生駒市。生駒山の裾野・高山町に
「特定非営利活動法人 日本サポートドッグ協会」があります。
ここでは介助犬、聴導犬の育成のほか、
必要としている人への補助犬の提供を行っています。
補助犬を育成するまでにかかる年月は、約2年。
補助犬としてのあれこれを訓練し、社会に慣れさせる。
必要としている人の身体の一部として
動いてもらうためには、
それくらいの時間が必要なのです。

でも、そもそも補助犬となるための犬は、
どうやって選ぶのでしょう。
理事長の阿部明子さんに、話を聞きました。

「訓練で、動作などは身につきます。
しかし大切なのは“人に優しかどうか”。
これは持って生まれた資質だと思うんです」
と阿部さん。

補助犬としての生活は、
必要としている人と同じ空間にいて、同じものを見るということ。
そうして補助犬が環境を理解し、
そのなかで「自分よりもこの人は動けない、だからサポートしなくちゃ」
という気持ちが犬に芽生え、
そこから信頼関係が強くなっていくのだそうです。
そのためには何より、犬が人に優しくできるかどうかが重要、
つまり資質=資格のようなもの。

「うちから貸与した補助犬を定期的に見に行くのですが。
あれ、訓練していた頃より優しくなってる、と思うことが多いんですよ」
資質があるからこそ、補助犬として活動し始めてからも、スキルが伸びるんですね。

また、介助犬と暮らし始めた人の方にも、変化があると言います。
自分と共に暮らし、
同じ感動を共有してくれる犬が側にいることで
「よし、この子がいるから頑張ってみようか」
と前向きな気持ちが芽生えるのです。

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