ペットと共に生きること

第27回 フンガイしているのですが・・・

4月のニュースで、
「泉佐野市がついに過料徴収へ!」と話題になりました。
前年に過料を徴収できる条例を制定したものの、
実際の徴収は始めておらず、しかし依然として、
市内では1か月に1400~1800か所のフンの放置があり、
ついに決断したそう。
今年の2月からはイエローカードを置くキャンペーンを
始めてみたものの効果なし・・・。
今後もイエローカードは継続するそうですが、
それでも大きな改善が見られない場合は、
過料徴収に踏み切るそうです。

地域住民の意思表示

さて、このニュースを見て
「イエローカード」ってなに? と
思った人もいると思いますが、
これは、尼崎市動物愛護センターなどでも採用されたもの。

どういうものか、簡単に説明しましょう。
事前に「フン放置禁止」のミニボード(イエローカード)を、用意します(多くの場合は行政が配付している)。
そして、道端でフンを見つけたら、
その横にこのボードを置きます。
数日後に同じルートを通り、新たなフンがあれば
またその横へ置く。
以前置いた場所からフンがなくなっていても、
ボードはそのまま置いておきます。
これを繰り返し、1か月後にすべてのボードを回収。
尼崎市動物愛護センターでは、
こんな方法で行っていました。
これは、フン害に悩む住民から、
ペットのフンを放置する心ない飼い主に向けた
意思表示のアイテムなのです。
「私たちは困っています」という思いを
このカードに託して、街をキレイにしていこう、という行動。
尼崎市では平成17年にスタートしました。
モデル地区を定め、2か月間試験的に実施。
結果は、その地域でのフンが驚くほど減ったそうです。
しかし・・・。

今では、尼崎市ではこのプロジェクトを
実施している地域はありません。なぜでしょう?
尼崎市動物愛護センターに話を聞いてみたところ、
地域からは問い合わせが来るが、
市民が自分でやるのだと説明すると、遠慮されるそう。
行政がイエローカードを設置してまわり、回収も行う、
と思われていたそうです。

ちょっと寂しい結末ですね。
自分たちの意思表示は、行政に委ねず自分たちで、
という方が街の美化への気持ちも強くなるはずなのに。

ペットとのライフスタイルにつなげたい

確かに、日本の各地で「フンの放置禁止」と書かれた
看板は多く見かけます。
それらは行政が配付・設置している場合も多く、
尼崎市のイエローカードも、それと同様のものだと
思われてしまったのかも知れません。
しかし、説明を聞いて「よっしゃ、やろう!」と
感じてもらえなかったのは、悲しいこと。

イエローカードを地域の人が取り組む意義は
どこにあるのでしょうか?
それは、先にも書きましたが
「フンで困っているという意思表示」です。
フンを置いていったからと怒鳴りつけるのではなく、
カードを置くことで、飼い主のモラル向上を促す。
置く側も、放置する側も、自発的に動く。
そして街が美しくなって、
飼っている人と飼っていない人が道端で挨拶を交わせる、
そんな街になれば楽しいと思いませんか?

社会全体のライフスタイルがスマートになるために、
この取り組みには住民の自発的な行動が必要なのです。
行政に頼ってばかりでは、
街が汚れたのは人のせい、キレイになるのが当たり前、
なんて思ってしまうかも知れません。
その気持ちはやがて、街への愛着も失わせて
しまうような気がしてしまいます。

ちなみに尼崎市動物愛護センターでは、
いまでも尼崎市のホームページ上で
イエローカードのひな形をダウンロードできるように
してあります。
いつかまた、市民の側から
「自分たちの地域のためにやります」という
声が上がることを祈って。
確かにペットを飼っていない人にとっては
「なんで私たちがやらなきゃいけないの?」
という気持ちが強いことでしょう。
しかし誰かが動かないと、街は美しくなりません。
泉佐野市のケースのように行政が処分を決めるのではなく、
自分たちの力で、なんとかしたいものですね。

この記事を書くにあたって、周辺の街を歩いてみました。
面白いのは、「フンの放置禁止」に関する
看板などを設置しているエリア、そうでないエリアがあるということ。
さらにそれらの町を観察し続けていると、
看板が設置されている街には、時折フンが落ちています。
反対に、看板のない街にはフンもない。
つまり看板がないのではなく、不要。
もしかしたら以前は、フン害があり、
看板もあったかも知れません。
しかし、今はない。街もキレイ。
そんなところを歩いていると、
やはり気分がよく、足取りも軽くなるものですね。