猫とともに去りぬ
ロダーリ作
関口英子訳
光文社文庫
定価 560円
本書は短編集です。
巻頭の作品こそ猫に関する話ですが、
残りは、猫と無関係。
しかし、動物と暮らす人に、
ぜひとも読んでいただいたい一冊。
バイクに恋した青年、ピアノと旅するカウボーイ、
魚になってベネツィアを救った一家の話…。
どれもこれも、奇想天外な話ばかりですが、
ひとつひとつ想像しながら読み進めると、
私たちの頭の中にいろいろな風景が生まれてきたり、
人間以外の生き物の感情をちょっと考えるようになったり…。
これって、誰もが子どもの頃に持っていた感情。
そして、大人になるにつれてなくしていった感情、
でもありますね。
タイトルにもなっている「猫とともに去りぬ」は、
“もしもおじいさんが猫になったら?”と子どもたちに言い、
そこから未完の話に子どもたちのやりとりを反映させ、
生まれた物語だそうです。
人間の世界に疲れたあるおじいさんが、
これからの余生は猫と一緒に暮らそうと決め、
アルジェンティーナ広場へ向かいます。
そこの鉄柵を越えると、おじいさんはなんと猫に!
その広場には、おじいさんのように
猫になって暮らす元・人間がたくさんいて、
おじいさんは楽しくてしょうがない。
しかしそんなおじいさんを、大好きな孫娘が見つける。
やがておじいさんはある決心を…。
この結末も、子どもたちが考え出したもの。
想像することは平和な解決を生み出す、
そんなことを思ってしまう話でした。
私たちの暮らしの中でも、
一緒に暮らす動物の気持ちを想像してみると、
日々がこれまで以上に楽しくなるかも、ですね。
そうそう、1冊に納められた各短編は、
要所要所に社会への風刺がちりばめられている点も
読んでいくうえでのポイントではないでしょうか。