VOL.6 「においの世界」の巻

飼い始めたときから我が家の2匹には、不思議と体臭がない。
特にシャンプーをしているわけでもないのに…(毎日いっしょなので、慣れているだけかもしれないが)。

その「無臭」みっくんの頭に娘は、鼻を押しつけて「このちょっとスッパイにおいが落ち着くわぁ」と、しみじみ。みっくんの事は全て知っておきたい、自称みっくん命の私も負けじとがんばってみるが、さっぱりわからない。親子でもにおいの感じ方は、こんなにも違うのかと、ちょっと驚き。においって感じ方もそれぞれだけど、好みの違いもはっきりしている、奥の深い世界。

2匹を飼うまでは、嗅覚と言えば犬の得意分野で、猫がクンクンにおいを嗅いでいる姿ってあまり印象になかった。けれどみっくんは、初めてのモノに出合うと、何でもにおって確認。お気に入りのにおいだと決まって私の方を見る。その顔が最高にかわいい。

小さい口から舌の先だけをチロッと出して、目をウルウル。私には微笑んでいるように見える顔で、ウットリと見つめる様子は、至福の時~って感じ。

大好きなピザやカレーだともう夢中。でも、においが好きなだけで、決して食べないのがみっくんのエライところ。勢いあまって熱~いカレーが鼻の先に付いて、ビックリするまで必死ににおう。にんにくもいため出すと、どこからともなくやって来て、キッチンのカウンター(幅が狭いので、みっくんの体は、はみ出してる!)に飛び乗り、においを捕まえるように、空中を嗅ぎまわす。

 刺激的なにおいの好きなみっくんに対して、リリィの一番の好みは、プレーンヨーグルト。においをかいでいるふりをしながら、いつのまにかペロペロ。なのに牛乳やチーズには、全く興味をしめさない。

 そんなリリィがどうしても許せないのが、オレンジの香り。皮を近づけるだけで、「嫌そう」な顔に。目を細~くして、顔はしかめっ面。その顔のまま、身体は逃げているのに、手だけ必死に伸ばして、連続猫パンチ。

 私が知っているだけでも、においに対する2匹の反応は、全然違う。小さい時から同じごはんを食べて、同じように育てているのに不思議。2匹を見ていると、同じように暮らしている私の毎日には、意識してにおいを嗅ぐ機会が滅多にない事に気付く。

 こんなにぼんやりと暮らしている私と違って、みっくんとリリィは、動物本来の鋭い嗅覚を持つ猫にしかわからない「においの世界」で生きているのかもしれない。いつも家族に見せている、ぬいぐるみのようなかわいい姿の中に、意外と野性が残っているのかも。