VOL.12 「野性の目覚め」

 いつもは仲良しの2匹。朝ご飯は並んで食べて、夜寝る時は揃ってベッドに。家族はその姿を見るだけで心の底から穏やかな気持ちに。あの日までは、この平和な日常が永遠に続くと信じていたのに…。

 忘れもしない3年前の十二月。その日はとても気持ちの良い晴天でした。年賀状の写真を撮影するために屋外の中庭へ2匹を連れ出しスタート。リリィを抱いている椅子に座る娘。足元にはカメラ目線のみっくん。「イイよー、可愛いネェ」順調に撮影が進み、あと少しで終了という時にみっくんに異変が…。

 普段の「モデル猫」からは考えられないダレダレの態度。思わず鬼カメラマン化した私が「もう少しの我慢!」と喝!唯一、冷たい床に裸足だったみっくん。(後から気付いたの。ゴメンね)身も心も寒さの限界を越えた時、「ウッウゥウ~~」物凄い目つきでコチラを睨み、ライオンのような重低音を響かせる野獣がそこに現れたのです。あまりの迫力に一瞬怯んだ私の横を黒い何かが駆け抜けた。リリィだ!

 みっくんの唸り声を聞いた瞬間、膝の上で甘える愛猫から正義の味方ブラックジャガーへと豹変。いきなりリングに飛び出したはいいがそこは狭い中庭。行き場を失いみっくんに体当たり。それを受けて反射的にヘビー級の猫パンチが炸裂!この一撃が引き金になり本格的な戦闘体制に。鬼気迫る2匹の姿に身の危険を感じた娘は、一人静かにその場を離れ無事帰還。

 真冬の空の下、いつ果てるとも知らない熱い戦いに「こんな野性的な一面があったんだ。これならどこへ行っても(本当はどこにも出さないよ)立派に生きていけるよ!」と猫バカ丸出しの感動に浸る私。日頃は、何不自由ない飼い猫ライフを満喫している2匹。全く悪さをしない良い子達に(贅沢にも)もう少しワイルドでもいいんだよ、と思っていたので目の前の光景に逞しい成長を感じ、応援までしてしまって…。

 気がつくと長期戦の様相を呈してきたので、レフリーの私はタオルならぬ椅子を振り下ろし、強制的に試合終了。

 喧嘩するほど仲が良い、というのは猫にも当てはまる。翌日には(2匹とも全くの無傷!)何事もなかったような元通りの仲良しに。ストレス発散のちょっとした運動だったのね。まだまだこれからもいろんな魅力が見られそうで、2匹から目が離せません。