パウなヤツら

9月2日
 昨日からゲッペイの食欲がない。一昨日の
夜まで、カツオの猫缶をもりもり食べていた
のに…。
 高齢だから食べないと、とたんに弱々しく
なる。明日は病院に連れていかないと…かな
ぁ? 

9月3日
 あいかわらず食べないゲッペイ、病院に連
れて行かなきゃ…。でも、どこへ? 昨年、
かかりつけの獣医さんが亡くなって、病院が
閉院してしまったし。
 ぐったりしたゲッペイをキャリーに寝かせ
タクシーに飛び乗り、以前にクチコミで聞き、
評判の良かった病院に駆け込んだ。
 点滴をお願いする。高齢なので、ほんの少
量。
 帰宅後、落ちついて眠っているゲッペイを
3時間ほど見守ったあと、後ろ髪を引かれな
がら、カンザワ自身の鍼治療で予約を入れて
いた鍼灸院へ向かう。
 院長はもともと獣医さんで、今は人間の治
療もする中医学の先生。ゲッペイも子猫から
青年期にお世話になっていたが、その後、我
が家が転居したため通うのが遠くなり、今は
カンザワだけがお世話になっている。
 「とにかく棒灸(お灸の一種)で腰を温め
てあげて!」
 と、先生からアドバイスを受け、急いで帰
宅したが…
 リビングのマットの上、カンザワ外出前と
同じ場所、同じ体勢で、ゲッペイは息を引き
取っていた。
 なでたら、まだ少し温かかった。
 ゲッくん、ごめん…。
 たぶん眠ったまま旅立ったのだろう。苦し
んだ様子がないのが、せめてもの救い。これ
が大往生というものかもしれない。
 享年19歳9ヶ月3日。  

9月5日
 ゲッペイのお墓をつくる。
 我が家のかつての歴代ペットは、父が所有
する埼玉の山奥の山荘の庭に眠っている。
 が、今週は両親が海外旅行中のため、兄と
相談し、ゲッペイのお墓は兄宅の庭につくる
ことにした。昔、仲良く遊んだゲッペイの弟
分、茶トラ猫「ペル」のお墓の隣りに。
 自宅から徒歩でお参りができるし、カンザ
ワ的にも、そのほうが嬉しい。
 子供の頃からゲッペイのファンで、「いつ
か自分もゲッペイみたいなオシキャットを飼
いたい」と言いつづけている甥が、お墓つく
りを手伝ってくれた。ゲッペイを飼いはじめ
た頃に小1だった甥も、今や20代後半だ。 
 「ゲッくんってスゴイね」
 「大往生だよね」
 ふたりで涙ぐみながら、お墓が完成。
 ふと見上げると、ヒョウ柄の雲!(まだら
雲?) みるみるうちに空の青にほどけて消
えた。
 「ゲッくん、空に昇って行ったね~」
 甥がつぶやいた。